示談書に印鑑を押そうとしている男性

デリヘルなどの風俗で本番行為や盗撮をしてしまい示談金を要求されることがよくあります。

では、示談とはそもそもどのような意味でしょうか。

示談とは、簡単に言うと、「裁判外での和解」のことをいいます。

和解とは、「当事者間に存在する法律関係の争いについて、当事者が互いに譲歩し、争いを止める合意をすること」をいいます。

これを風俗トラブルに当てはめると、お客が示談金を支払うことにより店側は警察への被害届(強姦・強姦未遂等)や裁判沙汰にしないことを約束することになります。

参考:風俗での本番や盗撮は犯罪として警察に逮捕されるか【弁護士が解説】

しかし、一度示談をしてしまうと、後で取返しのつかないことに成りかねません。

なぜなら、示談(正確には「和解」ですが、便宜上示談とします)には確定効という効力があります。一度決めた示談の内容は変更できないという効力のことです。

つまり、示談書に「風俗トラブルの示談金として、金三百万円支払います」と書いてあれば、たとえ後で、「こんなに高い賠償額払う必要あるのか」と思っても、減額することができないという意味です。

風俗店で書かされる示談書や念書とは。違いはあるのか

風俗で問題を起こしてしまったという負い目や、盗撮してしまったことを家族や職場に知られたくないといった危機感から、風俗店や風俗嬢の要求通り示談書や念書に署名をしてしまったという人もいるかもしれません。

これらの示談書類の内容はさまざまですが、一方的にこちら側に不利な内容が記載されていることも珍しくないようです。

風俗店では、「盗撮(本番行為)をした場合には罰金100万円」などの高額な罰金が設定されていることもありますが、このような風俗店の罰金請求には法的根拠がないため支払い義務は生じません。

参考:風俗店の罰金請求は拒否!罰金支払が不要な明確な理由を弁護士が回答

しかし、高額な金額が記載された示談書や念書に署名をしてしまったとしたらどうなのでしょうか。法的に効力が生じてしまって支払うしかないのでしょうか?念書と示談書とは何かから見ていきましょう。

示談書とは

示談書とは、基本的には風俗店側と利用者側の双方で話し合い、解決策について合意した上でその合意の内容について文書にしたものです。

一方の権利や義務が記載される念書とは異なり、双方の権利義務の内容が記載されるという特徴があります。お互いが譲歩して示談が成立すると、和解したものとされ、それ以降は同じ内容について争うことができません。(民法695条)

しかし、店舗側が作成した示談書は、悪質な店舗であれば店舗側にとって一方的に有利な内容だけが記載されていることも珍しくありません。

店舗で強く責められて恐怖で署名をしてしまったり、「どうしても家族や職場にばらされたくない」「できればこれで手打ちにしたい」という焦りがあったりということから、あまり内容を確認せずに示談書に署名してしまうことも多いようです。

それにとっさに示談書を見て「必要な事項が入っていない」などと判断できる人はごく少数でしょう。

そして、示談は一般的には和解契約があったものと考えられる性質があるため、一度署名をしてしまえば後から撤回したり無効を主張するなど効力を争うことが難しくなる場合もあるので、示談書を交わす際は慎重に内容を確認する必要があります。

では、一般的良く耳にする、「念書」とはなんでしょうか。示談書とは法的な効果に違いが生じるのでしょうか。

念書とは

念書とは、「念のために残しておく書類」という意味合いの書類です。

契約書を作る前の簡単な取り決め事項を確認したり、どちらか一方の主張を通したりするために作成されます。また、「詫び状」的な意味合いで作成されることもあります。

そして、風俗トラブルの場合は、利用者に対して風俗店が一方的に作成した書面に署名させるケースが多いでしょう。

風俗トラブルが起きた時に店舗側に署名を請求される書類はこの念書が多く、本番行為や盗撮・録音などのトラブルに対処するため、風俗店ではあらかじめ念書の雛形を作成しているところもあります。

そのため、念書には事実に関わらず「本番行為を強要した」「盗撮をした」というような文言が記載されていることもあります。

示談書と念書で法的な効力に違いはあるのか

署名してしまった書面のタイトルが、「示談書」の場合と「念書」の場合とで法的な効力は異なるのでしょうか。

これについては、交わした書面のタイトルが「示談書」ではなく「念書」や「覚書」であったとしても、記載された文言からしてそれが「当事者間に存在する法律関係の争いについて、当事者が互いに譲歩し、争いを止める合意をすること」を意味する内容であれば、示談が成立したと言えるのです。

風俗関係者との示談が成立していない2つの失敗ケース

示談が有効に成立していれば、基本的にはこれ以上、起きてしまった風俗トラブルについて責任を追及されないことになります。

逆に言えば、一見示談が成立したかのように見えて、実は示談書に不備があったり、示談する相手を間違えていた時には、有効に示談が成立したことになりません。

以下の2つの、風俗での示談の失敗ケースを見てみましょう。

1.今後一切争わない旨の文言が盛り込まれていないケース

これまで解説したように、示談書は、必ずしも「示談書」と書いていなくても効力を生じます。例えば、「念書」と書いてあった場合でも、内容から判断して示談であると認められれば良い事になります。

しかし、風俗店で本番行為や盗撮行為をしてしまい風俗店から書かされる示談書面は次のような文面である場合が殆どです。
「私○○は、△△さんに本番行為を強要した為、□□円支払います」
「私○○は、△△さんに盗撮行為を行った為、デリヘル店の罰金として□□円、△△さんに□□円支払います」。
これでは、単に損害賠償や罰金として金銭を支払う約束をしたにすぎません。

上にも書きましたが、示談とは、「当事者が互いに譲歩し、争いを止める合意をすること」ですが、 上記文面では、「今回起きたトラブルにつき今後一切争わない」旨の約束が為されていません。

例えば、本番行為トラブルを起こした場合、要求される可能性のある損害としては以下のものが考えられます。

・性病や妊娠検査の為に病院で検査するための治療費
・本番行為を強要された事による風俗嬢の精神的損害に対する慰謝料
・病院に行く為に仕事を休む事になった場合の休業補償
・トラブルに起因した精神的ショックで仕事を休んだり辞めた事による損害
・風俗嬢がお店を辞めた事による風俗店の損害

これらには、法的に支払義務のない請求も多々ありますが、支払義務の有無を抜きにして、風俗トラブルで生じた損害を全てひっくるめて争いを終結させることが示談の目的なのです。

当弁護士事務所によくある相談として、風俗店と書面を交わしてお金を支払ったにも拘わらず
「あのお金は罰金だから、店に対する損害賠償は別に払って貰う」
「この前のお金は店に対する賠償金で、女の子に対する慰謝料等はまだ支払って貰ってない」
と風俗店から再び金銭の要求をされているといったものが多くあります。

「今後、今回起きた風俗トラブルに関して一切争わない」旨の文言を交わしていないと、再三に渡りお金を要求されることがありますので注意が必要です。

もし既に書面を交わしてしまった場合で、それが示談書として有効かどうかの判断ができない場合には、当弁護士事務所にお気軽にご相談下さい。

2.風俗店と示談書を交わしてしまって、風俗嬢とは示談を交わしていないケース

いくら不備のない示談書を交わしたところで、それが風俗店と示談を交わしただけでは、後で風俗嬢から金銭の請求を受けることもあります。

本番にしても盗撮にしても、当事者は、お客と風俗嬢であって、本来風俗店は関係のない存在です。

風俗店から請求された時に法的に支払わなくてはならないのは、せいぜい女の子を性病検査に連れて行った時の立替診察料くらいで、その他の損害賠償や慰謝料は基本的に認められません。

参考:風俗店や女性に相場を超える慰謝料や賠償金を払ってはダメな理由

それに対し、お客側に故意・過失があって、本番や盗撮で風俗嬢に損害を与えた場合は、『風俗嬢に対して賠償しなくてはならない』のです。

つまり、風俗店と、風俗嬢の損害について示談を交わしたところで、風俗嬢を示談を交わしたわけではないので、後から風俗嬢から慰謝料や損害賠償を請求されても仕方のない状態ということです。

但し、風俗店が風俗嬢から委任状を貰った上で、風俗嬢の代理人としてお客と示談を交わすことは可能です。ですので、風俗店と示談を交わすときは必ず、風俗嬢からの委任状(代理人選任届)を確認してからにしなければなりません。

誤って、風俗店と示談書を交わしてしまった場合には、当弁護士事務所にご相談ください。

風俗トラブルの際に示談書に必ず盛り込むべき条項

上記のように、書面に不備があったがために再三に渡って金銭請求をされてしまっては、なんのために書面を取り交わしてお金を支払ったのか分からなくなってしまいます。

そこで、終局的に解決させるためにも、示談書に必ず入れておきたい条項について見ていきましょう。

秘密保持義務

店側に本番行為をしたことが判明した時には、身分証明書のコピーを取られて念書にサインをさせられるといった流れが典型的な流れとなりますが、その後示談金を支払うなどしてこの件が解決した後にも、身分証明書を悪用されるのではないか、職場や家族に今回の事をバラされるのではないかといった不安がつきまとうものです。

そのため、示談書には秘密保持義務の条項を入れ、コピーした身分証明書や個人情報の保存方法、返還方法などについて定めておくことが必要です。

清算条項

清算条項とは、「今後これ以上の金銭の請求をしない」といった内容の条項です。風俗トラブルで多いのが、一度金銭を支払ってしまうとその後いろいろな理由をつけて延々と要求されてしまうケースです。最初は本番行為に対する不法行為の損害賠償に始まり、それが終われば「本番行為を強要されたことが原因で体調を崩している」「あれから仕事に出ることができないでいる」などと理由をつけて金銭を要求される可能性があります。

こういったことを避けるために、示談書には清算条項を記載しておく必要があります。

風俗店側との示談を取り消すことはできるか

では、示談書をデリヘルなどの風俗店と交わしてしまった場合、取り消しや無効にすることは不可能なのでしょうか。

我々弁護士が風俗店に示談書の取り消しや無効を主張する時に使う法律用語をいくつか解説します。

公序良俗に反する内容の無効主張

民法90条には「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」と定められています。

「公の秩序又は善良の風俗」を一般的に「公序良俗」と呼びます。

契約などの法律行為に反社会性が認められる場合には、双方で合意をして法律行為をした場合でもその法律行為は無効となるのです。

示談書の内容が一般的な常識や倫理から著しく逸脱している場合には、公序良俗違反を理由に示談書の効力を争える可能性があります。例えば、本番行為や盗撮を行っただけで慰謝料が数百万円といったような不当に高額な金額の場合などです。

強迫による取り消し

もしも示談書に署名をするときに強迫行為が行われていたとすれば、民法96条を根拠に示談を取り消すことができます。

民法96条1項は「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」と規定しているためです。「署名しなければ会社や家族にこのことをばらす」といったような発言が風俗店側にあった場合、民法96条の強迫を根拠に示談書の効力を争えるということになります。

このように、示談書に署名をした後であってもその効力を争うことができる可能性は残されています。

もしも、すでに示談書に署名をしてしまったが効力を争いたいといった場合には、すぐに当弁護士事務所の弁護士にご相談下さい。

風俗トラブルの示談金相場

よく、風俗での本番トラブルや盗撮トラブルの示談金の相場は幾らですか?と質問のお電話を受けることがあります。

実は、示談金相場というのは、損害賠償や慰謝料とリンクしています。

示談というのは最初に説明したとおり、今後一切争わないことを約束することですが、争いの中に、損害賠償や慰謝料を請求することも含まれています。

つまり、損害賠償や慰謝料の額がそのまま示談金相場となるのです。

参考:風俗店や女性に相場を超える慰謝料や賠償金を払ってはダメな理由

風俗との示談交渉は弁護士に依頼

風俗店との示談交渉は、一般人との示談交渉と違い複雑です。

というのは、風俗店は反社会的勢力と繋がっている場合もあり、単に示談金額の調整だけではなく、依頼者の生活の平穏を乱されないように配慮しながらの交渉となるので、非常に神経を使います。
粗暴な風俗店関係者から依頼者を守りつつ、法に則った妥当な示談金に収めるためには、逆に相手に対してもプレッシャーを与えることができる権限がなくてはなりません。

弁護士は、依頼者に代わって「法律家の名前で」警察に告訴状を出せる唯一の資格です。
風俗店からの恐喝や脅迫を阻止しつつ示談交渉ができる唯一の資格保有者が弁護士となるのです。

当弁護士事務所は、総勢10名の弁護士が、「家族や職場に知られることなく迅速にトラブルを解決すること」をモットーに取り組んでいます。

依頼者の平穏な生活を取り戻すため、全力でご依頼者様を守ります。
相談する勇気が解決への一歩です。お気軽にご相談下さい。